基礎編の1と2で示した通り、交通事故に遭われた方は、医師や柔道整復師だけでなく、マッサージ師、鍼灸師の治療を「医師の同意」なく受けられ、その治療費は自賠責保険によって保険会社から支払われます。
それにも関わらず、
「鍼灸や指圧は自賠責保険の対象外です」とか
「原則的に医師の同意がないと使えないんですよ」とか
「柔整以外は医師の指示がないと無理です」とか
そういう保険会社の説明はドコから出てきたというのでしょうか?
答えは実に簡単で、悪い一部の保険会社は保険金の支払いを最小限に抑えるために強引なウソをついているのです。
患者さんも施術者も、保険会社だけに都合がいい条件を押し付けられているわけです。
どうやら保険会社には独自の自賠責保険運用マニュアルとか規程集が存在し、それに基づいて事故担当者が個別のケースに対応しているようです。
しかし、それは「保険会社が支払う保険金額を最小限に抑えるためのマニュアル」でしかありません。
もちろん法的な拘束力などは一切ないのです。
医療という職域において適切な言い回しではないかも知れませんが、ある意味では、整形外科医とマッサージ師・鍼灸師は「商売敵」ですから、わざわざ自身の収益を捨ててまで同意書や指示書を書くドクターなんて滅多といないでしょう。
それを知った上で、このような保険会社の勝手な規定を設けているのです。
マッサージ師、鍼灸師の治療にのみ「原則、医師の同意が必要」だなんて間違っています。そんな職業差別的な「原則」はあり得ません。
全ては保険会社が支払う保険金を最小限に抑えるための言い分でしかないのです。
このような保険会社にのみ有利な条件を、さも真実かのように堂々と告げられるので大半の患者さん、そして施術者までもが騙されてしまうのです。
その結果、
患者さんの「マッサージ治療や鍼灸治療を受ける権利」と、
施術者の「必要かつ妥当な施術費用を受け取る権利」が
一部の悪質な保険会社に奪われてしまっているわけです。
これはどう考えても卑劣なルール違反でしょう!
しかし、そういった問題があることすら知らない患者さん・施術者が圧倒的に大多数です。
なぜなら電話という証拠が残りにくい手段で、ホントのようなウソをつき、ありもしない「原則」を持ち出して、患者さんの「治療を受ける権利」を知らぬ間に放棄させてしまうからです。
国家資格を有する多くの施術者でさえも保険会社の自信タップリな説明に騙されているのですから、専門的な知識が少ない善良な一般市民である患者さんはまさか保険会社がウソをついているだなんて考えもしないでしょう。
「保険会社さんが言うなら間違いないだろうし、仕方ないか…」と患者さんに治療を諦めさせれば保険会社は治療費を支払わなくて済みますからね。
これは本当にひどい話です。こういう汚いやり方には非常に憤りを感じますし、社会的にも許されるべきものではありません。
マッサージ師も鍼灸師も、もっと怒っていいと思います!
何回も繰り返していますが、柔道整復師はもちろんのこと、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師が行う治療も自賠責保険の支払基準を満たしており、治療を行う際に「医師の同意」は必須条件ではないのですから、患者さんが望むのであれば治療が受けられて当然なのです。
悪い保険会社は電話口でウソをついて患者さんや施術者を騙してまでも保険金の支払いを抑えにかかってくると思っていてください。
悪質な事故担当者は「事故解決のプロ」ではなく「保険金の支払いを最小限に抑えるプロ」だということです。
正論を説いても保険会社は応じない
それでは自賠責保険の法律や規定に基づく事実を説明すれば、保険会社は納得して治療費を支払ってくれるのでしょうか?
「鍼灸でもマッサージでも自賠責って使えるんですよ!」とか、
「医師の同意って必要ありませんよね?」とか、
「法律やパブリックコメントにこう書いてあるんですけど!」とか。
それは確かに正論で正攻法かも知れませんがオススメはできません。
なぜなら時間とストレスがかかる上に、そんなことをしても正当な治療費が支払われるとは限らないからです。
くどいようですが、鍼灸やマッサージは間違いなく国の基準で定められた「必要かつ妥当な治療費」なのは疑いようのない事実なのですが、保険会社の事故担当者も自社の支払い額を抑えるプロです。
施術者が正義を貫いて電話したところで話は(残念ながら)平行線のままでしょう。
施術者から保険会社にとって不利な問い合わせが続く場合には「ちょっと席を外しておりまして…」といった適当な理由で事故担当者が電話にすら応じないこともあります。
その間に患者さんへの電話攻勢を強めて治療を諦めさそうとすることも珍しくありません(実体験です)。
患者さんに聞いた話によると
「鍼灸なんて自賠責ではできませんよ、常識ないですね」とか
「マッサージは自費で通ってください、こんなの当り前ですよ」とか
「もう病院の先生のところ以外は行かないでください」など、
かなり高圧的な強い口調で責め立てられるそうです。
こういった内容の電話を日に何回もかけてくる保険会社もあるみたいですよ。
交通事故に遭った上に、事故担当者から電話で何度も一方的にガミガミいわれる患者さんのストレスたるや半端なものではないと想像できます。
そういったストレスから逃れるために深く考えないまま保険会社の一方的な言い分を受け入れてしまうわけです。
こんな強引なやり方が一部ではまかり通っているのが現実です。
では一体どうすればいいのでしょうか?それこそが本ブログの要点です。
治療を希望される患者さんの要望に応え、なおかつ必要かつ妥当な治療費をストレスなく受け取るための方法があります。
次の項目から具体的に説明していきますので、しっかり読み込んでいってくださいね。
第2章:実践編 2-1◆解決チームの結成して自賠責保険を正しく使う。を読む。