自賠責保険の概要を理解したところで、次はマッサージ師、鍼灸師に関係する法律を確認していきます。
自賠責保険では「ケガの治療費として120万円までが支払われる」のは説明した通りです。
ここで明らかにしたいのは
マッサージ師、鍼灸師が行った治療の費用は自賠責保険の対象であり、しかも「医師の同意」は必要ない
ということです。
「鍼灸やマッサージは自賠責保険が使えない」とか「医師の同意か指示が原則必要」というのは誤った認識です。
大事なことなので、もう1回書きますね。
鍼灸師・マッサージ師は「医師の同意」がなくても自賠責保険を使えます!
その根拠となる法律等をキッチリと順を追って確認していきましょう。
① 自動車損害賠償保険法
自賠責保険は国が加入を義務付けている強制保険です。そのため、その内容も国の法律(自動車損害賠償保険法)によって定められています。
そこには以下のように書かれています。
【自動車損害賠償保険法 第十六の三】
保険会社は、保険金等を支払うときは、死亡、後遺障害及び傷害の別に国土交通大臣及び内閣総理大臣が定める支払基準に従ってこれを支払わなければならない。
② 自賠責保険の支払基準
では、その「支払基準」とはどんなものでしょうか?これも明確に設定されています。
自賠責保険の監督官庁である国土交通省と金融庁が定める支払基準は以下の通りです。
【自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準】 (国土交通省 金融庁)
(1) 治療関係費 ⑧柔道整復等の費用
免許を有する柔道整復師、あんま・マッサージ・指圧師、はり師、きゅう師が行う施術費用は、必要かつ妥当な実費とする。
このように、免許を有する柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師が行う施術は自賠責保険の支払基準を満たしていると明言されていますね。
③ 「医師の同意」は支払基準の要件ではない
また法律ではありませんが、同じく国土交通省と金融庁は以下のようにコメントしています。【自動車損害賠償保障法及び自動車損害賠償責任再保険特別会計法の一部を改正する法律の施行等に伴う政令、省令及び関係通達等の制定及び改正並びに支払基準の制定に関するパブリックコメントの結果について】 (国土交通省 金融庁)
意見:鍼灸治療に係る医師の同意の要件を外すべき。
回答:支払基準ではそのような規定を設けておりません。
このパプリックコメントでは「鍼灸治療」に対する問答ですが、これと同様にマッサージ師が行う治療についても「医師の同意」に関する規定は一切ありません。
④ 自賠責保険の契約には「医師の同意」の記載なし
また【自動車損害賠償責任保険普通保険約款】つまり、自賠責保険の契約条項には保険会社は「必要があれば保険会社は医師の診断書の提出を求めることができる」という項目はあるものの、「医師の同意」については全く記載がありません。⑤ 自賠責保険の約款に記載がない事項は…
さらに同約款には「この約款に定めていない事項については、日本国の法令による。」とも書かれています。すなわち自動車損害賠償保険法に従って自賠責保険は運用されるということですね。
これら①~⑤までを総合させると…
上記の項目はどれもネットで公開されている情報です。
これらをまとめると、
・マッサージ師、鍼灸師が行う治療は自賠責保険の支払基準を満たす。
・その請求の際には「医師の同意」は必須の条件ではない。
・保険会社は「必要かつ妥当」な施術費用を支払わなくてはならない。
ということになります。
柔道整復師の治療が「医師の同意」なく行えることは一般的かと思いますが、実は、マッサージ師、鍼灸師の治療も同じなのです。
国の支払基準を満たしているにも関わらず、柔道整復師だけがオッケーで、マッサージ師と鍼灸師はダメだという、そんな職業差別に整合性は一切ありません。
実際、私(鍼灸師)は交通事故に遭われた患者さんを「医師の同意」なしに治療し、「正当かつ妥当な施術費用」を保険会社に支払ってもらっています。
これは裏ワザでも不正請求でもなく、国家資格に与えられた正当な権利を行使しているに過ぎないのです。
大事なことですので、もう一度、強調して書いておきますね。
交通事故に遭った方は、「医師の同意」がなくても、柔道整復師、マッサージ師、鍼灸師が行う治療を受けることができ、その費用は自賠責保険によって補償されます。
これが自賠責保険のルールです。
我々、鍼灸師・マッサージ師も自賠責保険は使えるんです!
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