前揉と後揉について



前揉と後揉、ちゃんとしてますか?


横着して勝手に省略するのはもったいないですよ。


欠かさずしっかりと行うようにしましょう。


治療前のウォームアップ、治療後のクールダウンみたいな感じです。


どちらにもいえることは鍼の直前(直後)に指先だけでチョコチョコとやるのではなく、手掌全体を使ってより大きくダイナミックな動きで行うことが肝要だという点です。


鍼をする前、患者さんの筋肉はもちろん、皮膚も気持ちも比較的固く、緊張していることが珍しくありません。


その状態でいきなり鍼をしてしまいますと必要以上に痛みを感じたり、切皮や刺入が困難になってしまうことさえもあります。


そんな心身の緊張を緩和させるために前揉を行います。


鍼をする筋肉だけでなく、その周辺も併せて広く刺激します。


腰部に鍼をするつもりならば、腰部に加えて背部と臀部も前揉します。


頚部の鍼であれば、背部と肩甲骨周辺も前揉するといった感じです。


後揉も同様の部位に行うといいと思います。


鍼の刺激で筋肉の緊張は緩和しているはずですが、まだ緊張が残る筋があったり、東洋医学でいうところの気血がまだ動いていなかったり、そういったアンバランスを取り除くため後揉を行います。


これも広くダイナミックに行うことがポイントですね。


具体的な手技としては、前揉・後揉ともに、まず手掌全体で広く圧をかけます。


グググ…と圧迫しておいて、パッと圧を緩める。加圧・除圧の繰り返しです。


臀部や下肢はやりやすいと思います。


腰背部はあまり圧迫すると患者さんが息苦しくなったり、肋骨部などを強く真下方向に圧迫すると骨折することもあり得ます(特に高齢の患者では注意)。


腰背部については拇指で加圧・除圧を繰り返し行うのもいいかも知れません。


しっかり考えて加減しながらやっていくと良いと思います。


手掌で圧を加える際は肩から腕の筋力で「押す」のではなく、上半身の重さを「移す」ようにすると患者さんも受けやすいですし、施術者も疲れが少なくて済みます。


切皮時と同じように脱力して体重を手掌から患者さんへと移動させてやるイメージです。


臀部やアキレス腱周囲部は加重をかけても大丈夫ですから、その辺から練習して感覚を掴んでいくのも良いですね。


また慣れてくれば触診と前揉・後揉を同時に行うことも可能だと思います。


東洋医学は「診断即治療」ともいわれますからね。


鍼刺激のみと、鍼刺激+前揉・後揉では治療効果、筋緊張の緩和が全く違います。


ピンポイントの刺激は鍼で、広い範囲に行う刺激は前揉と後揉で。是非ともやってみてください。