切皮について その2



切皮に関して少し補足です。


鍼を扱う我々のやることは以前にも書いた通りですが、患者さんにも協力してもらって、より痛くない切皮を完成させましょう。


結論からいうと「患者さんの呼吸に合わせて鍼をする」ということです。


よく聞く話かも知れませんが、これは非常に有効な工夫だと思います。


具体的には、患者さんが息を吸っている間に切皮を行い、息を吐いている間に刺入します。


これだけです。これを確実に行うために患者さんに協力して頂くというわけです。


まず「呼吸に合わせて鍼をしていきますね」と伝えておきます。


押手をしっかりと作ってから、


次に「それでは息を大きく吸ってください、吸って~」と声をかけながら、


ここでトントントン…と切皮をします。


最後に「はい今度は息を吐きます、吐いて~」 


ここでスゥーと刺入です。


3回程度に分けて入れていくとスムーズかも知れません。


鍼が初めての方や恐怖感を抱いている方であっても「呼吸に合わせて鍼をする」という段取りを伝えておくことで心理的な抵抗がかなり低くなるようです。


そりゃやっぱり何の連絡もなしに急に鍼を刺されると怖いですし、それによって痛みも増幅して感じられるかも知れませんからね。


患者さんの意識を鍼だけに集中させるのではなく、呼吸という具体的な行動に意識を分散させることで何かと上手くいきますよ。


患者さんが呼吸を止めずに、息を吐いているなかで刺入しますから余計な筋肉の緊張も生まれにくい感じです。


刺入がスムーズになり、さらに精神的な緊張のあまり無呼吸状態が続いて気分が悪くなる等のトラブルも未然に防げます。


特に筋の深部まで刺入する際には有効だと思います。


反対に頭部などへの鍼ではあまり意味がないかも知れません。


色々と試してみてください。


基本中の基本である押手をしっかり作って安定させ、ブラブラに脱力した手首を鍼柄に落とすように刺手を使い、患者さんに呼吸を誘導しながら切皮と刺入を行います。


この流れの繰り返しです。


まずは自分の足ででも練習して、感覚が掴めてきたら実際の治療でも実践していけばいいと思います。


慣れれば当たり前に痛くない鍼ができるようになりますので、それまでは意識して要点を確認しながら続けてくださいね。