大腿部への鍼



体の中でも大きい筋肉である大腿四頭筋。大きい筋だけあって全身に与える影響も大きいです。


必要があればモチロン鍼をしますので、その辺りを解説していきましょう。


鍼を使うのであれば、まず「筋腹」ではなく「筋の付着部」を狙っていくのが良いと思います。


上部であれば上前腸骨棘の下方周辺で筋の緊張が強い所を、

下部であれば血海穴や梁丘穴あたりの筋緊張が強いところに鍼をします。


具体的な症状としては、腰痛の場合では四頭筋上部に、

膝痛の場合では四頭筋下部に刺激を送り筋の緊張を緩和させていきます。


◆大腿上部(上前腸骨棘の下)への鍼


上前腸骨棘の下であれば寸6から2寸の鍼が適当だと思います。


大きい筋なので鍼も大きくて大丈夫です。


鍼先が外方へ向く(中心線から離れていく)、もしくは鍼先が足方向へ向かうように深めの斜刺で入れていきます。


間違っても鍼が大腿の内側に深く入っていくような向きはいけません。


左右4本程度ずつ鍼を入れて、通電するのも効果的です。


部位の関係上、患者さんにズボンや下着を少し下げて頂く必要がありますのでタオルやカーテンをしっかり使って羞恥心に配慮しなくてはいけません。


まずタオルですが股間を広く隠すようにかけ、その後、ズボンや下着を下げて頂きます。


間違っても説明なしにズボンを下げるようなことはしてはいけませんよ!


不信感や不作法で済めばいいですけど、最悪の場合、訴訟に発展することもあり得ますので細心のご注意を。


◆大腿下部(膝関節の上)への鍼


膝関節の上部、血海穴や梁丘穴あたりへの鍼では寸3で必要十分かと思います。


やや斜刺気味に刺入させ通電しても構いません。


さて、鍼を刺す際に膝周辺を出せるような衣類であれば全く問題ありませんが、フィット感の強いスリムなズボン等であれば無理にめくり上げず、早めに脱いで頂きましょう。


ムリヤリにズボンをまくり上げても足が圧迫されてキツイだけですから、ササッと脱いでもらったほうが絶対に早いですし、お互いに楽ってもんです。


たとえば、

「膝周辺に鍼をしますので、すいませんがズボンを脱いでタオルをかけて仰向けでお待ちください。私は(カーテンの外へ)出ておきますので、大丈夫になったら声をかけてくださいね」

という感じでしっかり説明すればオッケーです。


いずれにしても、着替え用のジャージやハーフパンツを用意しておくと非常に便利だと思います。



冒頭でも書きましたが、大腿四頭筋は骨盤を支える大きな筋肉であり、その分、全身へ波及する影響も大きいものです。


初回からココを狙い打ちにすることは(あまり)ありませんが、治療が進むにつれ、使用頻度が高くなってくるように私は感じています。


安全に、そして患者さんが安心して治療を受けられるように工夫して刺激してやれば非常に効果が得られやすい部位ですので、もしよければ参考にしてみてください。


◆要点まとめ


・大腿四頭筋は大きい筋肉なので、全身に与える影響も大きい。

・筋腹ではなく、筋付着部を狙う。

・上前腸骨棘の下に刺鍼するときは患者さんの羞恥心に配慮する。

・ジャージやハーフパンツがあると非常に便利。