腰と並んで最も鍼をする機会が多いと思われる頚部の鍼についての解説です。
変に怖がって深く刺入できない方もいらっしゃるようですが、安全な部位であれば1寸程度刺入しても何のことはありません。
ある程度しっかりとした刺激で筋肉の緊張を緩和させてやりましょう。
まず頚部への刺鍼は伏臥位で行うのが基本です。
座位で頚部へ刺鍼することも稀にはありますが、その際は必ず刺激を少な目にします。
言うまでもありませんが神経や血管に近い部位での刺激過多による不快な諸症状、極端な場合では失神などを避けるためです。
◆余談ですが、治療中に失神してしまう人の特徴として、
痛みに弱い・精神的に過緊張状態である・治療(刺激)に慣れていない…
といったことがあります。
また失神に至るまでに、急に口数が減る(会話が止まる)・額に珠のような発汗がある・視界が真っ白(真っ暗)になると訴える…などの徴候がみられます。
患者さんが失神して良いことは全くないので、注意してみてくださいね。
座位の場合では特に注意して、施術中や通電中、置鍼中も患者さんに「大丈夫ですか?」など声掛けを行い意識の確認、失神などの徴候がないか常に観察しておくことが重要だと思います。
頚部はデリケートなので、刺鍼転向や雀啄は最小限に留め、刺入から抜鍼まで直線的な鍼の動きにするほうが無難です。
鍼の向きを変えるのであれば一旦抜鍼し切皮から再度おこなうほうがいいでしょうし、同じ箇所を長時間にわたって雀啄するのは避けたほうがいいですね。
筋緊張を取り除こうと夢中になってしまって患者さんのダメージが多くなるということ、結構ありがちです。
◆話を刺鍼に戻しまして、切皮の前には必ず触診と前揉を行い、少しでも表面的な緊張を緩和しておきます。
これがやるとやらないでは全然違うので、必ず、広範囲を意識して前揉を行ってください(同様に抜鍼後は必ず後揉を行います)。
鍼は直刺の刺入を避け45~50°程度の斜刺で入れていくのが安全かと思います。
中肉中背の男性であれば1寸3分程度、女性であれば1寸程度の刺入は特に問題ないはずです。
あまり直刺で深く入れると強烈な響き感があったり、嘔吐や不快感の原因になったりしますので注意が必要です。
もし座位で頚部へ刺鍼する必要があれば、鍼は前方向ではなく下方向へ刺入させます。
前方向ですと前述の失神や不快感のリスクが高まりますので注意してください。
筋肉でいえば脊柱起立筋や頭板状筋なんでしょうが、筋肉の名称はあまり考えなくても構いません。
とにかく触診で自分が「硬い・緊張している・緩めたい」と思ったところを狙いましょう。
最初は分かりにくいかも知れませんが、集中して触診していると感覚がハッキリしてきますよ。
抜鍼後にも必ず触診を行い、鍼の前後でどう変化したのかを確認します。
頚部とはいうものの、あくまでも「その辺り」というイメージで広く考え、必要に応じて背部や後頭部にも刺鍼・通電することもありますね。
よく使う部位なので安全かつ効果的な「適度な刺激」を狙っていきたいところです。
刺激が少なすぎては改善が見込めませんし、多すぎるとダメージが残りすぎてしまいます。
その辺りの加減は経験によるところが大きいと思うので、少しずつ刺激量を変えて試してみてください。
だんだん感覚的に分かってくるはずですよ。
◆要点まとめ
・頚部への刺鍼は伏臥位が基本。
・座位での刺鍼は刺激を少なめにする。
・刺激過多による患者さんの失神や不快症状に注意する。
・前揉と後揉は必ず行う。
・集中して触診し、刺鍼部位を決める。