「背中」と表現するとちょっと曖昧ですね。
頚部・肩甲骨部・腰部を除いた背部への刺鍼について解説します。
もはや言うまでもないかと思いますが、背部は気胸のおそれを常に念頭に置いておかなくてはいけません。
特に筋層が薄くなった高齢の患者さんなどでは鍼に固執せず「灸の熱刺激」に切り替えることが賢明です。
事故があってからでは遅すぎますからね。
具体的には安全策として、なるべく筋肉がしっかりして厚い箇所を斜刺で狙うのがいいでしょう。
直刺はあまりにも危険です。
斜刺~横刺で鍼尖が胸椎を向くようにし、慎重に刺入していきます。
極端に言えば胸椎や横突起に鍼尖を当てるようなイメージで刺入してみてください。
鍼が骨に当たるということは、それ以上の刺入はできなくなるので、胸膜は傷つかず事故も避けられるということです。
切皮から刺入は患者さんに呼吸を指示して、吸気時に切皮を、呼気時に刺入を行います。
痛みを和らげるという意味合いもありますが、背部に関しては呼吸(主には吸気)の体動で鍼が深く入り過ぎないようにするためでもあります。
・切皮について その1
・切皮について その2
仮に直刺で1㎝刺入したとしても呼吸や通電による筋収縮、タオル等の重みで思いがけず深く入ってしまうことも十分に考えられます。
学校でしっかり教育されたと思いますので、もはや言わずもがなといった内容ですね。
しかし軽く考えず、安全な治療を行うことは本当に大切です。
◆背部を刺激せずに、背部の筋緊張を緩和させる方法
気胸などのリスクを考えて「背部に刺鍼せずに背部の筋緊張を緩和させる」には、特に肩甲骨周辺の筋と上腕三頭筋を刺激するのが良いと思います。
テンセグリティー構造を理解していれば合点がいくはずです。
要するに肩甲骨周辺の筋や上腕三頭筋によって背部の筋が引っ張られて緊張することがあるからですね。
・テンセグリティ―構造について
◆要点まとめ
・背部への鍼は気胸のリスクがある。・斜刺~横刺で鍼尖が椎骨を向くように刺入する。
・背部の筋が薄い患者さんは灸に切り替える。
・背部に鍼をせずに筋緊張を緩めるには、肩甲骨周辺の筋や上腕三頭筋を緩めるとよい。