今回は鍼灸師の「お金」の話を考えてみましょう。
独立開業する際に「医療従事者である自分が患者さんからお金を巻き上げて私腹を肥やしてもいいのか?」と本気で悩まれる方が一定数います。
結論からいえば、詐欺や不正でない限り、医療で利益を得ても全く問題ありません。
人の役に立って生計を立てるのですから何の負い目も感じる必要なんてないんです。
「善い人」ほど、この手の問題で頭を抱えてしまう傾向にあるようですね…。
日本では「お金は汚い」もので「金儲けは卑しい行為」みたいな間違った価値観が根強く残っていたりもしますが、そんなの絶対にありえませんからね!
たとえば、患者さんを騙して不当な利益を得るのは詐欺行為ですから絶対ダメですし、健康保険や自賠責保険の制度を悪用して不正請求をするのも犯罪ですから絶対ダメです。
しかし、サービスに見合った適正な施術費用を受け取ることには何の問題ありません。
不正行為でも犯罪行為でもないんですから、汚いことも卑しいことも全くありませんよ。
つまり鍼灸師もドンドン患者さんの役に立って、ドンドン儲ければいいんです。
◆適正価格を考える
「お金」に対する間違った認識があると、開業時に施術費用を必要以上に安く設定してしまいがちです。
一生懸命に提供する60分の施術を2,000円と設定してしまう人も珍しくありません。
これは適正価格を逸脱しており、むしろ利用者の意欲を損ねてしまうことがあります。
例えば、「あんパン」を買いに行ったとしましょう。
3種類のあんパンが売っていましたが、それぞれ値段が違うようです。
◆1個 ¥1,000-
◆1個 ¥100-
◆1個 ¥10-
さて、どんな印象を受けますか?
・「1個1,000円」のあんぱんって高過ぎますよね!でも何か特別な小豆や砂糖を使っていたり、中に栗が入っていたり、1,000円もする特別な要素があるのではないかと考えてしまいます。
・「1個100円」のあんぱん…。まぁこんなもんかなと、特に高いとも安いとも思わない「普通だろ」という印象だと思います。味も見た目も内容も、ごくごく一般的なあんぱんを想像すると思います。
・「1個10円」のあんぱんってコレは安過ぎるでしょう!まずはその価格に驚きが走ると思いますが、その次の瞬間には「安さの理由」が気になるはずです。賞味期限ギリギリなのかな…?安くて傷んだ材料で作ったのかな…?ひょっとしてアンコが極端に少ないのかな…?
だいたいそんな感じだと思います。
「安かろう 悪かろう」という言葉があるように、価格をあまりに下げ過ぎると、選ぶ側に「不安感」や「猜疑心」を抱かせてしまうのです。
ここまでを踏まえて、先ほどの「60分2,000円」という治療費の設定をどう思いますか?
「なんか安過ぎないか?それだけ技術や自信がないのか?なにか裏があるんじゃないか?」と勘繰ってもしまいますよね。
高い価格設定の商品は「良い理由」を探すのに対して、安い価格設定の商品には「悪い理由」を探してしまうというのが人間心理です。
安い買い物をして身体に害があっては困りますからね。
施術費の設定も同じような感じです。
「患者さんから高額な治療費をいただくのは申し訳ない」という気持ちで低価格設定にしても、逆に患者さんの不安感を煽る結果となってしまうこともあるのです。
独立開業するぐらいですから専門的な知識や技術は相当なものだと思います。
それは別に安売りしなくてもいいんです。
適正な価格で、それを必要としている方に、胸を張って提供してください。
その結果、利益が出て、お金がたくさん入ってくるというのは最高に良いことです。
正しいことをして得た正しいお金です。
その分だけ人助けをし、患者さんを満足させ、役に立てているということです。
例に出した「あんパン」は目の前に実在する物質的な商品ですが、鍼灸というのは形のないサービスです。
つまり「無形の技術」に対して価格設定をしなくてはいけないので、それを決めるのはなかなか難しいところがあると思います。
難しい問題ですが、適正価格から必要以上に安くするのではなく、むしろ少し高めに設定して、その価格に恥じぬサービスを提供できるように頑張るというのがいいんじゃないかと私は考えています。
関連記事:治療費の決め方。「+1000円」で考える方法。
◆まとめ
ちょっと話が少しズレましたね。
まとめると、鍼灸師が「金儲け」してもいいんです!
適正価格で勝負したほうが患者さんにとっても安心感があると思います。
その患者さんを治したり満足させたりすることで正しい収入を得ても何の問題もありません。
独立開業すれば個人で行う事業(ビジネス)ですからね。
仕事して、お金を得て、生活していくんです。
頂くお金に見合うだけの働きをすれば、鍼灸師が儲けたって全然オッケーです。
個人事業主として鍼灸というサービスを提供し、利益を上げ、事業を継続させ、幸せに生活していくのは(大変ですけど)すばらしいことですよ。
どうか、お忘れなく!