「よくある質問」をまとめてみました。確認してみてください。
Q:弁護士さんにどういう感じで依頼していいか分かりません。
A:身分を明かし、状況を説明し、仕事をお願いしたらいいと思います。
具体的には、
「(地名)で治療院を開業している(名前)と申します。
いま交通事故に遭われた患者さんの治療をしております。
この患者さんを先生にご紹介して、保険会社との示談交渉を依頼したいのですが、いかがでしょうか?
弁護士特約は(ありますorありません)。よろしくお願いします。」
といった感じで伝わるはずです。
まずは弁護士さんのところにメールを入れてみるといいかも知れませんね。
Q:通常の治療費より高くなっても大丈夫なんですか?
A:仮に普段の治療費が1回3,000円なのに、交通事故に遭われた患者さんを自賠責保険で治療する費用を1回6,000円としても、治療費の目安とされている「労災基準の1.5倍から2倍」の範囲内なので全く問題ありません。
問題があるとすれば「普段の治療費が1回10,000円」というようなケースです。
交通事故患者さんの治療なので「1回20,000円」という保険請求はなかなか受理されないように思います。
「労災基準の1.5倍から2倍」を上回るからです。
こういった場合は、1回の請求額を「目安額の上限」まで引き下げるのが最もスムーズで無難かと思います。
どうしても目安額を上回る額で治療費を請求したい場合は、その根拠や理由を明確にし、理学検査等を用いた客観的な治療効果を数字で示したカルテを作成しておいてください。
弁護士さんによっては上手く請求を通してくれるかも知れません。
Q:患者さんが鍼灸(マッサージ)治療と並行して整形外科にも通いたいというのですが、大丈夫でしょうか?
A:全く問題ありません。病院、鍼灸院、マッサージ院、接骨院、どれを組み合わせて並行して治療を受けても自賠責保険の対象になります。
ただし、1日に受けられる治療は1回のみですので、同じ日に整形外科と鍼灸院で治療を受けることはできませんので注意が必要です。
Q:事故車両に同乗していた方も自賠責保険を使えるのでしょうか?
A:もちろん使えます。自賠責保険は被害者を救済するための保険ですから、交通事故の「被害者」であれば、事故を起こしてしまった車やバイクの運転手さんが加入している自賠責保険を使えると思ってください。
また単独事故であっても、同乗者(運転者以外の人)がケガをした場合は、原則的に交通事故の「被害者」として認められます。この場合でも自賠責保険から保険金を受け取ることが可能です。
同乗者が何人いても、1人あたりの補償内容に変わりはありません。
Q:鍼灸師やマッサージ師が弁護士さんに仕事を依頼して嫌な顔をされたり面倒がられたり相手にしてもらえないようなことってありますか?普段、弁護士さんと関わることが全くないので不安なのですが…。
A:全く問題ありませんので安心してください。
弁護士さんもビジネスですから、利益をもたらす依頼人・紹介者に対しては親切に接してくれますよ。
「士業」と呼ばれる職業の事業経営が一昔前と比べて非常に厳しい…などといわれて久しいわけですが、弁護士さんにも該当することがあるようです。
そんな折に「弁護士特約」を利用した示談交渉依頼が入るとあれば大いに歓迎してくれること間違いなしです。
しかも継続して患者さんを紹介してもらえるとなれば尚更のことでしょう。
変に「敷居の高さ」を意識せず、仕事の依頼をすれば大丈夫ですよ!
もし上から目線の横柄な態度の弁護士に当たってしまった場合には遠慮なく別の弁護士さんを探せばいいだけの話です。
Q:「交通事故治療専門鍼灸院」や「ムチウチ専門マッサージ院」など、専門性をアピールしても大丈夫でしょうか?
A:こういった表記は「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律第7条」または「柔道整復師法第24条」に基づく広告の制限に違反しますので絶対にしてはいけません。
また「自賠責保険取扱」や「各種保険適用」なども広告してはいけない内容です。違反については罰則の規定があり、近年は保健所もしっかりチェックしていますので気をつけてください。
※この法律ができた後にインターネット技術が一般化したこともあり、ネット上の表現については今のところ「広告ではない」というふうに解釈されています。
つまり例えば、実店舗の看板や新聞折り込み等に「交通事故専門」と掲げることは違反ですが、インターネット上のサイト等に「交通事故専門」と掲げることは(今のところ)可能です。
Q:「弁護士特約は使えない」と言われたのですが?
A:一般的な交通事故では問題なく使える弁護士特約ですが、加入しているにもかかわらず特殊なケースでは使えないことがあります。
•車検証に「事業用」と記載されている自動車を運転している場合に発生した事故。
•地震、噴火、津波によって生じた被害事故。
•無免許運転、酒気帯び運転または麻薬等により正常な運転ができないおそれのある状態で生じた被害事故。
•交通事故を起こした加害者(弁護士特約を使えるのは交通被害者のみ)。
・極めて重大な過失に起因する損害。
•被保険者が自動車修理業など自動車を取り扱う仕事に従事しており、その業務として受諾した被保険自動車に搭乗中に発生した被害事故。
・被保険者の父母、配偶者、子への損害賠償請求。
このような場合では弁護士特約が使えないことがあります。
また弁護士特約の範囲も保険会社によって微妙に違うので確認が必要です。
仮に弁護士特約が使えなくとも弁護士さんに依頼して自賠責保険を活用したほうが患者さんにとって有利になることが多いというのは説明した通りです。
Q:「医師の同意」が必要とした裁判例がありますが、本当に「医師の同意」は要らないのでしょうか?
A:確かに鍼灸師・マッサージ師の治療には「医師の同意」が必要であるとした裁判記録はあります。
しかし反対に、「医師の同意」がなくとも治療効果を認めて保険会社に費用の支払いを命じた裁判記録もあります。
そもそも裁判は利害の衝突や紛争を解決・調整するための個別判定ですので、それぞれの背景に左右される部分もあるようです。
つまり判例はあくまでも「個別判定の結果」であり、法律と同等までの効力はなく、優先されるのは法律であると考えられます。
自動車損害賠償保障法には「医師の同意」についての規定はなく、柔道整復師、マッサージ師、鍼灸師が行う治療は自賠責保険の支払基準を満たしていることからすれば、やはり有資格者であれば「医師の同意」なく交通事故に遭われた方を治療して、その費用を自賠責保険に求めても何ら問題ないでしょう。
柔道整復師は「医師の同意」が必要なく、鍼灸師、マッサージ師だけが原則的に必要だなんて誰が言い始めたのでしょうか?
本マニュアルを理解された方でしたら、もはや言うまでもありませんよね。
Q:経絡治療を行っているのですが、これも自賠責保険の対象でしょうか?
A:経絡治療とは鍼灸治療における治療術・治療方法のひとつで、主に気の調整を目的にしたものですね。
結論からいえば、治療の効果さえあれば(経絡治療に限らず)どんな治療スタイルでも自賠責保険の対象になります。
国が定める支払基準には「免許を有する柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師が行う施術費用は、必要かつ妥当な実費とする。」としか書かれていません。
つまり免許を有する方の施術であれば、経絡治療でもトリガーポイントでも独自の手法でも区別などはなく、いずれも自賠責保険の対象です。
ただし「全身の気の調整」に終始して、事故による負傷部位を全く無視するような治療内容ですと保険会社から治療の効果や有効性について説明を求められることもありえます。
あくまでも事故によって生じた症状への治療を第一としていれば問題ないと考えられます。
Q:保険金の分配はどのようにすればいいでしょうか?
A:まず弁護士特約がある場合ですが、これは全く問題にならないはずです。
弁護士費用は弁護士特約から出ますので、治療に関係する費用は施術者へ、残りは患者さんへという感じですね。
少しややこしいのは弁護士特約がない場合ですね。
このケースでは、まず先に弁護士さんへの成功報酬を支払います。
次に残った額を患者さんと施術者で分けていきます。
「保険会社から得られたのは○○万円です。ここから弁護士費用として○%の○○万円いただきます。慰謝料・休業補償…などを合計すると○○万円で、これが患者さんの分です。治療に関係する費用を合計すると○○万円で、これは施術者さんの分です。」
こういった感じで弁護士さんに分配をお願いします。
いざ現金を前にすると正当な分配であっても不和が生じやすいものです。
保険金の分配は弁護士さんに主導してもらったほうがトラブルになりにくいと思います。
Q:後遺症についてはどうすればいいでしょうか?
A:治療を続けた結果、事故前の状態まで回復するのが一番ですが、残念ながら症状が残ってしまう場合があります。
このように、これ以上治療を継続しても症状の回復が見込めない状態になったことを「症状固定」といい、残存してしまった症状のことを「後遺症」もしくは「後遺障害」と呼んでいます。
治療を継続したにも関わらず後遺症が残った場合も自賠責保険の補償対象ですので弁護士さんを活用してください。
「後遺障害診断書」は医師が作成しますが、弁護士さんに前もって相談しておくといいでしょう。
患者さんにとって最も有利な認定が得られるはずです。
その結果、後遺症の等級認定や慰謝料の額が大きく変わってきます。
弁護士さんと細かく相談しておくのが患者さんの利益に繋がります。
Q:保険会社の事故担当者から「まだ治療が続きますか?もう治ったでしょう」とか「そろそろ1ヵ月なので治療を終了してもらってもいいですか?」とか「いつになったら治るんですか?」など、治療を早期に切り上げるように迫る感じの電話がかかってきます。どうすればいいですか?
A:自賠責保険には治療の期限などは定められていないので、保険会社の都合に合わせて治療を終了する必要は全くありません。
それらは患者さんの回復具合によってのみ決められるものだと思います。
施術者が必要と判断するのなら堂々と治療を続けて構いません。
保険会社からの電話には開口一番「弁護士さんのところに連絡してください」とだけ伝えれば大丈夫です。
あとのことは弁護士さんが対応してくれます。
保険会社も弁護士さんが相手となると大きかった声も弱々しくなるものです。
しかし、この手の電話は本当にしつこくかかってきます。
これはネット上で見かけた情報でしかありませんが保険会社では「DMK136」という隠語があるそうです。
つまり「打撲は1ヵ月・ムチウチは3ヵ月・骨折は6ヵ月」が目安という意味だそうですが、こんなのはあくまでも保険会社が勝手に決めたものでしかありません。
保険会社も支払う保険金を最小限に抑えるために必死です。もしかすると同じような内容の電話が患者さんのところにもかかっているかも知れないので、患者さんを安心させる意味でも確認してみてくださいね。
Q:交通事故の患者さんが来ないんですが…?
A:こればっかりは患者さんに選ばれるのを待つしかありません。
院内の掲示やインターネットの利用等で「自賠責保険が使える鍼灸院・マッサージ院」であることが地域に知られてくると、また違ってくると思います。
患者さんに必要とされるときが必ず来ますので、しっかり準備しておいてくださいね。
・参考資料(リンク集)も読む。